日本未病学会/健康と病気の間を科学する
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みらいの未病に向けて
写真:日本未病学会 理事長 小谷 和彦
日本未病学会 理事長
小谷 和彦

 日本未病学会は,「未病」の学術的探究と社会実装への取り組みを積み重ねてまいりました.未病は,健康と病気との間に存在するユニークな概念です.本学会では,未病を“自覚症状はないが検査では異常がある”または“自覚症状はあるが検査で異常がない”状態と捉えています.病気と健康の間を往来する過程を想起する人もあるでしょう.この概念は身体的な面のみならず,心理・社会的な面も含む心身観からなります.そして,未病対策は,病気の発症や病状の重症化を防ぎ,延いては心身の平穏を志向します.未病に処することは,個人や社会において意義を有することでしょう.

 本学会には,多職種による学際的な組織として発展してきた歴史があります.かかりつけ医や特定の専門領域の医師,歯科医師,薬剤師,看護職,心理職,臨床検査技師,栄養士,運動指導士,リハビリセラピスト,東洋医学者,研究者等の協働を,一層強化していく所存です.また,保健医療分野のみならず産業界や行政等との連携も図ってまいります.そして,こうした中で育まれた知見やテクノロジーは地域社会や日常生活で活用される必要があります.本学会は,各自の参加をもって “未病”に対して取り組める“みらい”を俯瞰的に“デザイン”するようでありたいと思います.

 “未病みらいデザイン”の時代-会員および社員の皆様方ならびに関係各位の一層のご理解とご協力をお願い申し上げます.

小谷 和彦
自治医科大学地域医療学センター 教授

「未病」の由来
「未病」という言葉は日本ではまだ聞き慣れない言葉かもしれません。
この言葉は2000年前の後漢の時代に、中国最古の医学書とされる「黄帝内経」 にはじめて見られます。(資料1)
このなかで、「未病」とは「病気に向かう状態」を指し、この未病の時期を捉えて治すことの出来る人が医療者として最高人(聖人)であるとかかれています。
日本では貝原益軒が83歳にして著した「養生訓」に登場しています。

聖人は未病を治すとは、病いがまだおこらざる時、かねてつつしめば病いなく、もし飲食・色欲などの内慾をこらえず、風・寒・暑・湿の外邪をふせがざれば、其おかす事はすこしなれども、後に病をなす事は大にして久し。内慾と外邪をつつしまざるによりて、大病となりて、思ひの外にふかきうれひにしづみ、久しく苦しむは、病のならひなり。病をうくれば、病苦のみならず、いたき針にて身をさし、あつき灸にて身をやき、苦き薬にて身をせめ、くひたき物をくはず、もにたきものをのまずして、身をくるしめ、心をいたましむ。
最近では予防医学への関心がたかまり、辞書にも「未病」という言葉が
普通に掲載されるようになりました。

「病気ではないが、健康でもない状態。
自覚症状はないが検査結果に異常がある場合と、自覚症状はあるが検査結果に異常 がない場合に大別される。骨粗鬆症、肥満など。」 ス?パ-大辞林より
未病の日について
本会では第23回学術総会において83歳で「養生訓」を著した貝原益軒の誕生日
12月17日を“未病の日”と定めました。
自身の身体のケアをこころがけましょう。
「未病期」の状態
日本未病学会では、(図3)のように「自覚症状はないが検査では異常がある状態」と「自覚症状はあるが検査では異常がない状態」を合わせて「未病」としています。
そして「病気」とは交叉部位である「自覚症状もあるが検査でも異常がある状態」としています。
「未病期」は自覚症状のあるなしで「西洋型未病」と「東洋型未病」に分けることができます。
これまで看護は主に西洋型医療の一貫として、まさしく病気の中心者(患者)と接してきましたが、自覚症状のない西洋型未病期に属する人は多く、いわゆる病気予備軍イコー ル未病期でもあるわけです。

(図3) Y.Fukuo 2000
「未病」の分類・対象

未病はM-ⅠA、ⅠB、ⅠC、M-Ⅱに分類されます。(表1:未病の分類参照)「自覚症状はないが 検査では異常が見られ、放置すると重症化するもの」(M-Ⅰ)と「自覚症状はあるが検査では 異常がないもの」(M-Ⅱ)としています。

M-ⅠAは通常の検査、保険でカバーできるところで異常が確認されるものです。
M-ⅠBは特殊検査で異常が確認されるものです。

自費で行う検査で異常が判明するものとして、M-ⅠCは遺伝子診断によってわかる未病、 M-Ⅱは東洋医学的な未病で「自覚症状があるけれど検査では明確にできない」状態をさします。西洋医学的未病の観点からは、「検査を行うことで発見できる異常状態」です。

未病の対象となるのは、境界域高血圧、高脂血症、境界域糖尿病、肥満、高尿酸、動脈硬 化、骨粗鬆症、無症候蛋白尿、B型肝炎ウィルスのキャリア、無症候性脳梗塞、潜在性心不全、 脂肪肝などがあり、さらに広がることが予想されます。 一方、シンドロームX、インスリン抵抗性はアメリカからきた未病として捉えられ、現在ではメタボリックシンドロ?ムは、まさしく「未病」といえるでしょう。

M-Ⅰ 自覚症状はないが検査で異常が見られ、放置すると重症化するもの    
  1. 検査(一般)で異常があるもの
  2. 特殊検査で異常が見られるもの
  3. 遺伝子レベルで異常があるもの

M-Ⅱ 自覚症状はあるが検査では異常がないもの

「未病期」の看護
当学会では、この未病期から病気への進行を食い止めることを「一次的未病看護」とし、入院患者における重症化の予知、予防、再発予防を「二次的未病看護」としています。
これまでの病気になってからの看護、重症化してからの看護から視点をかえて、「未病看護」が今後の新たな分野といえます。
 
一般社団法人 日本未病学会事務局
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