日本未病システム学会/健康と病気の間を科学する
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理事長挨拶
写真:日本未病システム学会 理事長 吉田 博
日本未病システム学会
理事長 吉田 博

理事長就任にあたって

このたび日本未病システム学会の理事長に就任いたしました吉田博です。まず会員および社員の皆様方のご支援にお礼を申し上げます。併せて福生前理事長の多くの実績の後を受け、さらに本学会の発展に向けて取り組みますので、皆様のご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。

この未病システム学会が発足して四半世紀が経ちましたが、高齢化率25%以上の超高齢社会の現在、世の中の「未病」への関心の高まりが強く感じられます。「健康寿命の延伸」が叫ばれるなか、一方で「持続可能な社会保障、国民皆保険制度を守る」ことも求められています。例えば医療においては、「Precision medicine」や「Choosing wisely」などの考え方が注目されてきていますが、これはすなわち、限りある医療資源を効率的に機能させることであり、持続可能な社会保障へのあり方でもあります。そのためには、病気を未然に防ぐことや疾病の悪化を防ぐ「未病」への対策が根本的に求められると思います。「健康と病気の間」すなわち「未病」を認知し、科学し、多職種の医療者がチームとなってケアする未病への取り組み、すなわち本学会の活動は基本的に不可欠であります。

未病には、自覚症状はないが検査で異常が見られる西洋医学的未病と、自覚症状はあるが検査では異常がない東洋医学的未病という考え方があります。健康と病気の間を捉える場合、Disease (疾病)、容易ならざる状態ではなく、Illness(病い)、気分が優れず何となく普段と違う段階は、癒しやセルフメディケーションが働くステージでもあり、これらの一部も未病域にも入ることになります。もとより、未病~病気のスペクトラムはグラデーションになっていてシームレスの状況にあるともいえるのです。社会構造の観点からは、病院完結型医療のCureから地域包括医療のCare、そしてさらにその先には本学会が目指している地域包括未病ケアがあり、これもまた有機的な連続です。

本学会はともに歩む志をもって、医師のみならず歯科医師、薬剤師、臨床検査技師、栄養士、看護師、東洋医学、機能性食品分野、メンタルヘルス、運動エクササイズ、疫学・公衆衛生学分野など、多くの職種が一堂に集まり、「チーム未病」として皆が知恵と力を合わせて実り多い活動を推進し、社会の期待に応えて参りたいと思います。

東京慈恵会医科大学 臨床検査医学講座 教授
東京慈恵会医科大学附属柏病院 副院長・中央検査部診療部長

「未病」の由来
「未病」という言葉は日本ではまだ聞き慣れない言葉かもしれません。
この言葉は2000年前の後漢の時代に、中国最古の医学書とされる「黄帝内経」 にはじめて見られます。(資料1)
このなかで、「未病」とは「病気に向かう状態」を指し、この未病の時期を捉えて治すことの出来る人が医療者として最高人(聖人)であるとかかれています。
日本では貝原益軒が83歳にして著した「養生訓」に登場しています。

聖人は未病を治すとは、病いがまだおこらざる時、かねてつつしめば病いなく、もし飲食・色欲などの内慾をこらえず、風・寒・暑・湿の外邪をふせがざれば、其おかす事はすこしなれども、後に病をなす事は大にして久し。内慾と外邪をつつしまざるによりて、大病となりて、思ひの外にふかきうれひにしづみ、久しく苦しむは、病のならひなり。病をうくれば、病苦のみならず、いたき針にて身をさし、あつき灸にて身をやき、苦き薬にて身をせめ、くひたき物をくはず、もにたきものをのまずして、身をくるしめ、心をいたましむ。
最近では予防医学への関心がたかまり、辞書にも「未病」という言葉が
普通に掲載されるようになりました。

「病気ではないが、健康でもない状態。
自覚症状はないが検査結果に異常がある場合と、自覚症状はあるが検査結果に異常 がない場合に大別される。骨粗鬆症、肥満など。」 ス−パ-大辞林より
「未病期」の状態
日本未病システム学会では、(図3)のように「自覚症状はないが検査では異常がある状態」と「自覚症状はあるが検査では異常がない状態」を合わせて「未病」としています。
そして「病気」とは交叉部位である「自覚症状もあるが検査でも異常がある状態」としています。
「未病期」は自覚症状のあるなしで「西洋型未病」と「東洋型未病」に分けることができます。
これまで看護は主に西洋型医療の一貫として、まさしく病気の中心者(患者)と接してきましたが、自覚症状のない西洋型未病期に属する人は多く、いわゆる病気予備軍イコー ル未病期でもあるわけです。

(図3) Y.Fukuo 2000
「未病」の分類・対象

未病はM-TA、TB、TC、M-Uに分類されます。(表1:未病の分類参照)「自覚症状はないが 検査では異常が見られ、放置すると重症化するもの」(M-T)と「自覚症状はあるが検査では 異常がないもの」(M-U)としています。

M-TAは通常の検査、保険でカバーできるところで異常が確認されるものです。
M-TBは特殊検査で異常が確認されるものです。

自費で行う検査で異常が判明するものとして、M-TCは遺伝子診断によってわかる未病、 M-Uは東洋医学的な未病で「自覚症状があるけれど検査では明確にできない」状態をさします。西洋医学的未病の観点からは、「検査を行うことで発見できる異常状態」です。

未病の対象となるのは、境界域高血圧、高脂血症、境界域糖尿病、肥満、高尿酸、動脈硬 化、骨粗鬆症、無症候蛋白尿、B型肝炎ウィルスのキャリア、無症候性脳梗塞、潜在性心不全、 脂肪肝などがあり、さらに広がることが予想されます。 一方、シンドロームX、インスリン抵抗性はアメリカからきた未病として捉えられ、現在ではメタボリックシンドロ−ムは、まさしく「未病」といえるでしょう。

M-T 自覚症状はないが検査で異常が見られ、放置すると重症化するもの    
  1. 検査(一般)で異常があるもの
  2. 特殊検査で異常が見られるもの
  3. 遺伝子レベルで異常があるもの

M-U 自覚症状はあるが検査では異常がないもの

「未病期」の看護
当学会では、この未病期から病気への進行を食い止めることを「一次的未病看護」とし、入院患者における重症化の予知、予防、再発予防を「二次的未病看護」としています。
これまでの病気になってからの看護、重症化してからの看護から視点をかえて、「未病看護」が今後の新たな分野といえます。
 
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